介護する人、睡眠で悩む人は注目!カリスマ作業療法士開発の安眠のためのマットレス
- 2024/10/8
- ライフスタイル
アラ還くらいの年齢になると、多くの人が頭を抱えるのが“親の介護”に関する問題。記者も同様で、先日86歳の誕生日を迎えた父親の介護について悩む日々を送っている。とはいえ一緒に暮らしているわけではないし、何か問題が発生した時に東京の自宅から横浜の実家へ駆けつけるくらいで自分が介護に疲れているというわけではない。むしろ心配なのが、父の世話をしている81歳の母親だ。
朝から晩まで四六時中居眠りしている父は、その反動からか夜中になると何度も目を覚まし、その都度トイレに連れて行ってもらうために眠っている母を起こすので、母が疲弊し切っているのは明らか。かかりつけの病院に行くと、父よりも母が看護師さんに心配されるという始末だ。
それなら自分もたっぷり昼寝すればいいのでは? と母に提案したところ、朝8時から夜9時までお店に立つ生活を長年続けてきたためか昼寝する習慣がなく、眠ろうと思っても眠れないという。そのため寝不足でフラフラのまま日中を過ごし、夜は夜で眠りについたと思ったら父に起こされる毎日を送っているのだ。
さすがにこれはマズイと焦った記者は、まず父がなぜ昼に居眠りして夜は眠れないのかを考えてみた。そして、医療や介護の素人なりに分析して導き出した仮説が「睡眠の質が悪い」というもの。つまり、夜にちゃんと眠れていないから昼に居眠りをしてしまう。少し居眠りするだけならまだいいが、朝食や昼食を除いたほとんどの時間に居眠りするので、結局また夜は眠れないという悪循環を引き起こしているというわけだ。
では、睡眠の質を高めるにはどうすればよいのか。父は糖尿病を患っていて食事制限も行っているので、サプリや食品はNG。それなら寝具を変えてみるのはどうだろう。ということで、東京ビッグサイトで10月2日から3日間開催されていた『H.C.R.2024 第51回国際福祉機器展 & フォーラム』に足を運んだ。
カリスマ作業療法士が開発したマットレスと遭遇
ここでまず、ウチの両親のライフスタイルを鑑みた上で選ぶべき寝具の条件を決めておこう。
・普通の布団に使えるもの(ベッドがないので)。
・軽いもの(高齢者が押し入れにしまうので)。
・メンテナンスフリーのもの(高齢者に手間をかけさせたくないので)。
・5万円以内のもの(予算的な都合で)。
そんなに都合よく条件に当てはまるものが見つかるのかな?とちょっと心配になりながら、たくさんの出展者のブースが立ち並ぶ様子を眺めていると気になる看板が目に入った。それが上の写真だ。なんと「いつもの布団に敷くだけ」「介護負担軽減」「簡単に丸洗い」と書いてあるではないか。
こちらのブースに出展している株式会社ピーエーエス(pas)は、知る人ぞ知るカリスマ作業療法士・野村寿子さんが代表を務める福祉器具のメーカー。これまでも座位保持装置をはじめとする福祉機器や、その技術を応用した一般向けの製品など、さまざまなプロダクトを開発している。そして、先の目に入った看板に描かれていたのが今回の国際福祉機器展での同社イチオシの新製品「RECOVER-LAY(リカバーレイ)」だ。
RECOVER-LAYは布団なら敷布団の上、ベッドならマットレスの上に敷くマット。写真を見てもらえばわかると思うが、その仕組みは高反発樹脂素材を強弱の格子状に編み込んだもの。ピンク色が濃い部分の反発が強く、向こう側が透けて見える部分は反発が弱くなっている。この規則正しく並んだクロス構造が骨をフィットさせることで、筋肉の負担を軽減させるという。また、反発が強い部分が突起となってカラダを保持・安定させることでカラダの緊張がリセットされるそうで、結果として寝ている人の柔軟性や運動性がアップし、寝返りも簡単になるので、介護する人もされる人も快適になるのだ。
写真は障害のため横になってもいつも丸まっていたお子さんが、RECOVER-LAYに横になるだけで緊張している筋肉がリラックスしてカラダが伸びている様子。
上がRECOVER-LAY、下が綿入り敷布団で障がいのある人を介助人が寝返りを手伝う様子。突起部分がカラダをしっかりとホールドするので、軽い力で寝返りさせやすい。
続いては柔軟性の検証。まずは普通の敷布団の上に40代半ばの男性に横になってもらい、介助人が足を上に持ち上げてみたところ大体45度くらいまで上がった。
続いてRECOVER-LAYの上に横になって同様の動作をしたら、なんと70度くらいまで上がるように。普通の敷布団では足を持ち上げようとしてもカラダが不安定なので股関節が固まってしまうのだが、RECOVER-LAYの上では骨が正しい位置にフィットすることで筋肉が緩んで柔軟性がアップし、それに伴い股関節も緩んで動かす可動域が増えるのだ。
RECOVER-LAYを使うと腹筋を使って起き上がるのも楽にできるように。障害があって起き上がるにはベッドの柵に掴まってカラダを引き上げていた人でも、RECOVER-LAYにカラダがホールドされることで支点が定まって筋肉が働きやすくなり、柵に掴まらなくても起き上がることができるようになるという。
ちなみにRECOVER-LAYのカバーは撥水加工が施されており、写真のように水をこぼしてしまったとしても浸透せず、拭き取るだけでOK。中身の本体もシャワーをかけて洗えるのでメンテナンスも楽々だ。
開発者の株式会社ピーエーエス 代表取締役の野村寿子さん。作業療法士としての長い経験から、障害者をはじめ、多くのユーザーが楽になる製品を生み出し続けている。
RECOVER-LAYのほかにも掛け布団やサポート枕、腕まくらなど、pasではさまざまな寝具を開発している。枕の上に置かれているのは、セラピストの手の柔らかさと安定感を再現し、頭の形に添って包むように支える3次元形状のサポート枕「p!nto Float」。中央は自然とカラダに沿って自由自在に形が変わる腕まくら「Airy BEANS」。そして左の掛け布団が、重さのバランスや爽快感、保温性など睡眠に求める快適さを追求した「X-BALANCE COMFORTER」だ。
ブース内では、野村さんが開発した様々な製品を展示。写真は車椅子に取り付ける傘だが、よく見ると車椅子に座っている人にかかる部分と押す人の部分の面積が違うことがわかる。非対称にすることで座っている人を覆う面積が増え、雨や日差しを防ぐ効率がアップするのだ。
RECOVER-LAYの効果を実父で検証 はたしてその結果は?
RECOVER-LAYに大きな可能性を見出した記者は、早速入手してまずは一晩父を寝かせてみることに。その結果を母に尋ねると、その日は朝まで起きてこなかったという。おかげで母もぐっすり寝ることができて気分は爽快だとか。RECOVER-LAY導入の最も大きな目的は、父が朝まで眠ること以上に母が起こされずに眠ることだったので、それが果たせて本当によかった。まだ一晩しか使っていないので完全な検証結果が出たとは言えないが、母の勘では「これはいいかもしれない」とのこと。とにかく「RECOVER-LAYを使うのは夜だけにして。昼間使うと熟睡して、また夜眠れなくなるかもしれないから」と伝えて、なるべく昼間は起きている状況を作ることを提案した。
展示会で野村さんもおっしゃっていたが、これは家庭で使うのはもちろん、病院や介護現場で使うことに大きな意味がありそうだ。そうなるとネックになるのは、その価格。RECOVER-LAYはオンラインショップ価格で4万円ほどするので、介護を受けている人がそうおいそれと購入できるとは思えない。介護用品としてリースが認められればユーザーは安価に利用でき、それに伴って多くの人たちが快眠という恩恵に預かることができるのだが。介護用品として認可される基準はよくわからないが、国や自治体も含めて市民の健康のために動き出してほしいと強く感じた。