「第3回ベストプロデューサーコンテスト2024 the FINAL」をレポート 八芳園と地方自治体が描く“ウエディングの未来”
- 2024/3/23
- ライフスタイル
総合プロデュース企業の八芳園が、結婚式におけるチーム力・提案力の向上を目的に行っているプロジェクト「ベストプロデューサーコンテスト」。そのファイナリストがプランを披露する「第3回ベストプロデューサーコンテスト2024 the FINAL」が、3月18日に東京・白金台の同社で開催された。この日は総勢137人の中から選ばれた18人の出場者が3チームに分かれ、八芳園と連携協定・パートナーシップ協定を結ぶ3自治体を舞台とした仮想の結婚式プランを発表。普段から実務で結婚式に関わるスタッフたちの気合いがこもった、熱いプレゼンテーションが展開された。
3度目の開催は“地産地消のブライダル”をプロデュース
「TEAM for WEDDING」を合言葉に、部署・企業を越えたプロジェクトとして2022年に初開催された「ベストプロデューサーコンテスト」。第3回となる今年は、「プランナー」「サービス「キッチン(料理)」「フラワー」「ヘアメイク」「衣裳」の6部門に社内外から総勢137人の参加があり、筆記による1次試験、実技による2次試験という2度の審査の末、18名のファイナリストを決定した。
今大会の最終審査では最優秀者を決めることはせず、この18名を抽選によって6人ずつのチームとし、同社が連携協定・パートナーシップ協定を結ぶ、宮崎県宮崎市、福島県鏡石町、栃木県那須塩原市の3自治体に振り分けて、地産地消のブライダルをプロデュース。実際に現地を視察して考案した結婚式プランを発表するという初の試みを行った。
大会の冒頭に挨拶に立った同社代表取締役社長の井上義則氏は、同社が2年半前から「総合プロデュース企業」という新たなブランディングを行ってきたことにふれ、その中で意識していることとして『環境資本』『文化資本』『経済資本』という3つの言葉を紹介。その一環として2市1町での結婚式プランの作成に至った今回の意図を語り、次のような趣旨を述べた。
「昔のウエディングには各地の食文化や伝統が反映され、まるでお国自慢のような地域文化を感じることができました。しかし、さまざまな情報が横並びで見られるようになった現代では、我々業界人も新しい形態の婚礼が登場するたびに右や左ばかりを見て、足元にあるウエディングの本質を見失ってきた側面もあると感じます。ニーチェの名言の中に『汝の立つ処深く掘れ、そこに必ず泉あり』という言葉がありますが、私は今、その泉は地方にあると思っています。ウエディングは文化を資本に、もう一度再構築する時期が来ていると感じます。今日は若い世代が地域の文化、食材や人々にふれ、どんな提案を見せてくれるのか、とても楽しみにしています」
肌で感じたこと、聞いたことを反映した3つの結婚式プラン
舞台全体を使って展開された各チームのプレゼンテーションでは、まず初めに宮崎市チームが「不易流行」をコンセプトとした結婚式プランを発表。「不易流行」とは、本質的なものを大事にしつつも新しい流行を取り入れていく姿勢のこと。本プランでは、平安時代からの歴史が伝わる「青島神社」を挙式会場に設定。八芳園で古くから愛されてきた和婚を大切にしつつ、披露宴は海沿いリゾート「青島ビーチパーク」の開放的な環境で行う、伝統と新しさがつながるプランが提案された。
一方で、フランス語で太陽を表す「au soleil」と名付けられたコース料理は、宮崎市の景勝地・鬼の洗濯板を表現した黒いチュイールを使ったアミューズや、今世紀に入って栽培が復活した伝統野菜の佐土原茄子を添えた宮崎牛のロティなどを取り入れ、地産地消の食材だけでなく見た目にも宮崎市への思いがこもった内容に。
挙式時の和装も不易流行のコンセプトを活かし、新婦の白無垢は小物にトレンド色を採用。新郎の紋付は伝統的な黒羽二重ではなく、ラメ感とグラデーションの入ったものを採用することで、洋装が多い宮崎市のウエディングでも取り入れやすい形を目指した。和装、洋装に身を包んだ新郎新婦のモデルが登場すると、場内は一層華やかな空間に変わった。
続いて発表を行った鏡石町チームは、「人と人のご縁を結ぶ。鏡石町・八芳園のオリジナルウエディング」をコンセプトに結婚式プランを企画した。
鏡石町は福島県の中通り南部にある人口1万2千人ほどの町だ。ここで町おこしの一端を担っている田んぼアートの会場を訪れたチームは、その感動を料理に反映。カラフルな田んぼアートを土鍋ご飯で表現した。ライブキッチンのような形で料理を紹介しながら土鍋の蓋を開けると、そこにはまさに鏡石の風景を彷彿とさせる光景が表れ、会場から「おおー」という声が上がった。
1880年に開設された日本初の国営牧場「岩瀬牧場」を会場に選んだチームは、西洋式庭園を持つこちらで、あえて和装人前式を提案。その中で、町の特産品である桃のイメージを各所に散りばめ、新婦のヘアは桃の花が目一杯感じられるよう躍動感を持たせ、メイクも春の訪れを感じさせるピンクでまとめるなど、青空が近い会場とのマッチングを重視した。
テーブルコーディネートにも桃が感じられる演出を施し、桃の生産で発生する剪定枝を籠に有効活用。一方で、披露宴用のパーティードレスには、町の木である桜をイメージしたドレスを取り入れた。
そして那須塩原市チームは、本州で生乳生産量1位を誇る同市の食に強く感動。その上で、現地の人が当たり前に感じている土地の魅力を再発掘するという思いを込め、「開拓」というテーマで結婚式のプロデュースを行った。
会場に設定されたのは、明治21年(1888)に建てられた国指定重要文化財「旧青木家那須別邸」だ。那須塩原市がかつて塩の名産地であったことにちなんで“ソルトセレモニー”から始まる披露宴では、「つなぐ」と題したコース料理を提供。調理の際に出る端材から旨みを抽出したスープに始まり、那須鶏、御養卵、うど、菊芋など、地元名物をふんだんに盛り込んだ構成で、その中でもデザートに使われる苺の「とちあいか」は、断面がハート型という縁起のいいフルーツだ。
一方で、ウェルカムドリンクには、本来は食べ物を包む際に使われる赤松材の「経木(きょうぎ)」でグラスをラッピングした、ほうじ茶トニックを提供。木材の香りを飲み物にまとわせる斬新な発想に注目が集まっていた。また、農家で収穫前に落ちてしまい出荷に至らなかった柚子を活用するアイデアも披露され、このチームが現地で感じた農の恵みに対する感謝が伝わってくる内容だった。
地方自治体と関わり深める新プロジェクトの発表も
各チームの発表の後には、来賓として招かれた連携自治体の首長らからの講評もあり、実際に地元を訪れ、愛着を感じて組まれたプランに喜びの声が聞かれた。また、出席者には、プレゼンテーションの中でふれられた「車海老のタルタル サンシャインキャビアのアクセント」(宮崎市チーム)、「土鍋アートと香の物」(鏡石町チーム)、「苺とミルクのデクリネゾン」(那須塩原市チーム)という3品に加えて、同社のグループ企業が福岡県福岡市で運営する「THE KEGO CLUB by HAPPO-EN」で提供されている「九州郷土料理のだご汁 蕎麦粉のパスタ・ピッツォケリ」が、配膳・運搬ロボット協力のもと振る舞われた。
今回発表されたのは仮想の結婚式プランであるため、実際の商品化は行われないが、この日の会場にはアニヴェルセル、ホテル雅叙園東京、ホテル椿山荘東京、明治記念館という、同社とともに東京を代表する結婚式場の関係者も招待され、業界全体で新しい発想を生み出し、婚礼産業の未来を盛り上げていこうという同社の気概が伺える機会だった。また、式の中では同社取締役総支配人の関本敬祐氏から、同社が4月にスタートする取り組み「FURUSATO WEDDING PROJECT by HAPPO-EN」が発表された。地方自治体とウエディングやイベント、プロダクトなどの開発に取り組む本プロジェクトにおいて、今大会で得られた知見は大いに活かされていくはず。
そして常務取締役の薮嵜正道氏が閉会の言葉を述べて全体のプログラムが終了。熱を帯びた大会は連携協定を結ぶ自治体との絆を深める機会になっただけでなく、予選を含めた若手中心の参加者たち、およびこの日の会場を盛り上げたスタッフにとっても、新たなモチベーションを抱かせる経験をもたらしたことだろう。
「八芳園」公式ホームページ:https://www.happo-en.com/