食欲の秋の救世主!今話題の『短鎖脂肪酸』で太りにくい腸をつくる!その効果的な方法とは?

最近よく耳にする「タンサ」というワード。腸内でビフィズス菌などの腸内細菌が作る物質『短鎖脂肪酸(タンサシボウサン)』のことなのだが、これが太りにくい体づくりやさまざまな健康対策のカギを握っているらしい。歳とともに代謝が悪くなり、「昔は同じ量を食べても太らなかったのに、今は食べた分だけ脂肪になる…」「疲れやすい」「風邪が治りにくい」といった悩みを持つ人は筆者だけではないだろう。そして「すぐ太っちゃう…」と悩みながらも、やってきた“食欲の秋”に食べる楽しみが止まらないという葛藤を抱える今日この頃。『短鎖脂肪酸』はその救世主となるらしい!
今回、腸内環境研究のスペシャリストで、テレビ等でもお馴染みである株式会社メタジェンの代表取締役社長CEOで慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任教授の福田真嗣先生の話や、料理研究家・管理栄養士でありながらダイエットエキスパートとして多くの雑誌でもダイエット料理を考案・製作する金丸絵里加さんの『短鎖脂肪酸』を増やすための超簡単レシピを紹介しよう。

福田真嗣先生

博士(農学)慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授。世界から注目を集める「腸内環境」の最先端研究を行う。株式会社メタジェン代表取締役社長CEO。明治大学大学院農学研究科を卒業後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、現在は慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任教授。複数の論文が世界的な学術雑誌「Nature」に掲載される。腸内環境を適切にデザインすることで病気ゼロ社会を実現するため、2015年(株)メタジェンを設立。
<主な著書>「改定版 もっとよくわかる! 腸内細菌叢~“もう1つの臓器”を知り、健康・疾患を制御する!~」(2022年/羊土社)他 。

金丸絵里加さん

管理栄養士・料理研究家・フードコーディネーター。テレビ出演、雑誌取材、書籍の出版のほか、旅館やレストランのメニューコンサルタントにも従事。毎日食べても飽きずに「おいしい!」と顔がほころぶ、食べてホッとするような「お家ごはん」が得意。書籍、雑誌、テレビなど多数メディアで、栄養価計算(カロリー計算)や栄養指導、ダイエットアドバイスなどを加えながら、健康的な食生活のための料理レシピを提案している。著書に『女子のやせ定食』(光文社)、『365 日のサラダ』(永岡書店)他多数。

腸内細菌が作る重要物質『短鎖脂肪酸』とは?

腸内環境はさまざまな腸内細菌と、それらが作り出す代謝物質により複雑に構成されているが、特に有用な代謝物質として注目を集めているのが『短鎖脂肪酸』。実際に、腸内の『短鎖脂肪酸』の健康機能性については数多くの論文で報告されている。

『短鎖脂肪酸』とは、ヒトの大腸内でビフィズス菌などの腸内細菌が、水溶性食物繊維やオリゴ糖などをエサにして作りだす酸(有機酸)の一種。代表的なものに「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」がある。これらの『短鎖脂肪酸』を産生する元となる腸内細菌はそれぞれ異なり、例えばビフィズス菌は主に「酢酸」を作る。また、「酪酸」を産生する菌群は総称して酪酸菌と呼ばれている。それぞれが直接的に、あるいは受容体などを介してさまざまな機能を発揮することが知られており、その働きは多岐にわたる。例えば、「酢酸」には妊婦や胎児への影響、抗肥満効果、免疫グロブリンA(IgA) を介した感染症予防効果、「プロピオン酸」には持久力向上や抗肥満効果、「酪酸」には腸管バリア機能向上やアレルギー抑制効果などが報告されている。また近年の研究で、体脂肪の低減、基礎代謝の向上などのほか、免疫機能やストレスなどに対しても、さまざまな作用を持つことがわかってきた。さらに福田先生の研究では、持久力の向上やO157感染症の予防効果も証明されている。

このように『短鎖脂肪酸』には、抗肥満効果や体脂肪の低減といった太りにくい体づくりに関わる働きや、感染症予防や基礎代謝の向上などさまざまな健康効果があることがわかった。つまり『短鎖脂肪酸』が腸内でたくさん作られれば、太りにくい体になり健康効果も期待できるとのこと。では、『短鎖脂肪酸』を増やすにはどうしたらいいのだろうか。

『短鎖脂肪酸』を増やす方法は?

「『短鎖脂肪酸』をたくさん産生できる理想的な腸内フローラを目指すためには、『短鎖脂肪酸』を作るビフィズス菌や酪酸産生菌など、さまざまな種類の腸内細菌が腸内にいる状態にすることと、それらのエサになる食物繊維が豊富に含まれる食材や素材を継続的に摂取していくことがカギになります」(福田先生)

①腸内環境を良好にして『短鎖脂肪酸』を作ってくれる腸内細菌を増やす

腸内には、約1,000種類、一人あたり約40兆個の腸内細菌が生息している。この腸内細菌の集団は多種多様の腸内細菌が密集している様子がお花畑のように見えることから“腸内フローラ(腸内細菌叢)”と呼ばれている。理想的な腸内環境とは、いろいろな種類の腸内細菌がバランス良く存在していて多様性があることと、『短鎖脂肪酸』を作る腸内細菌が多いこと。健康な人と病気の人の腸内を比較すると、病気やアレルギーのある人の方が、多様性が低下していることがわかっている。タンパク質や脂質中心の食事、不規則な生活、ストレス、加齢に伴う免疫機能の低下などが原因で腸内フローラのバランスが崩れると、『短鎖脂肪酸』などの身体に良い効果を与える成分が十分に産生されなくなってしまうのだ。

加齢とともに腸内フローラは変化。特にビフィズス菌の割合が年齢とともに低下する。

②腸内細菌にエサを与えて『短鎖脂肪酸』を作ってもらう

ビフィズス菌や酪酸産生菌などの腸内細菌を増やしても、それだけでは『短鎖脂肪酸』は生成されない。重要なのはどんな“エサ”を与えるか。野菜や果物、きのこなどに含まれる食物繊維が大腸に届くと、腸内細菌のエサとなり、『短鎖脂肪酸』が作られる。特に、チコリやごぼうなどに多く含まれるイヌリンという水溶性食物繊維や、バナナなどに多く含まれているフラクトオリゴ糖が、『短鎖脂肪酸』の産生に有効だという。

帝人(株)が、福田真嗣先生監修のもと研究を行なった結果、ビフィズス菌と食物繊維イヌリンを含むヨーグルトは、乳酸菌だけが使われているヨーグルトに比べ、『短鎖脂肪酸』を多く産生させることが明らかになった。

太りにくい腸をつくる!食生活のポイント

料理研究家・管理栄養士の金丸絵里加さんによる『短鎖脂肪酸』を増やす食生活のポイントを紹介しよう。

「食事で腸内の短鎖脂肪酸の産生を高めるためには、「ビフィズス菌+水溶性食物繊維」を継続的に摂るのがおすすめです。『ビフィズス菌入りヨーグルト100g+水溶性食物繊維2g』を毎日摂り続けることで短鎖脂肪酸が増え、太りにくい体質につながる良好な腸内環境を維持できるようになるといわれています」(金丸さん)

ポイントは「ビフィズス菌入り」のヨーグルトを選ぶこと。実は同じヨーグルトでも「乳酸菌のみ」「乳酸菌+ビフィズス菌入り」といった種類があり、その健康メリットは異なる。乳酸菌は主に「乳酸」を作り、多くは小腸で働くのに対し、ビフィズス菌は「乳酸」だけでなく、『短鎖脂肪酸』の一つである「酢酸」を作り出し、主に大腸で働く。『短鎖脂肪酸』を効率よく産生するためには、「ビフィズス菌入り」のヨーグルトを選ぶことが大切だ。具体的な商品としては、森永ビヒダスヨーグルト(森永乳業)やナチュレ恵megumi(雪印メグミルク)、BifiXヨーグルト(江崎グリコ)などは「ビフィズス菌入り」のヨーグルトである。その中でもBifiXヨーグルトは食物繊維イヌリンも配合しており「ビフィズス菌+水溶性食物繊維」を一緒に摂ることができるので有効だ。
また、ヨーグルトを摂取するタイミングは食後がおすすめ。ヨーグルトに入っている乳酸菌やビフィズス菌は、胃酸の影響で死んでしまうことがあり、特に空腹時は胃の中の酸性度が高くなるため、生きたまま腸まで届きにくくなるのだ。また「夜ヨーグルト」を習慣にすると、寝ている間に腸内細菌による体内発酵を促したり、体内時計のリセットにつながったりと、さまざまな効果が期待できるという。

水溶性食物繊維とは?

食物繊維には、水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維があり、『短鎖脂肪酸』を産生するために有効なのが水溶性食物繊維。なかでも腸内細菌に利用されやすいといわれているのが水溶性食物繊維のイヌリン。食材から取り入れるのが難しい場合は、チコリから抽出されたイヌリンをパウダータイプにした商品のほか、ビフィズス菌とイヌリンが両方入ったヨーグルトなども販売されているので活用するとよいだろう。

※水溶性食物繊維2gを摂るための目安量 (参考:日本食品標準成分表 八訂)
穀類:押し麦(乾) 約大さじ3、オートミール 約2人分
いも類:さつまいも 中1本
果物:アボカド 約3/4個、キウイ 約1と1/2個、りんご約1と1/2個、ドライプルーン 約6個
豆類:納豆 約2パック、木綿豆腐 約6丁
野菜:ほうれん草 約1と1/2束、ごぼう 約1/2本、にんじん 約1と1/2本、かぼちゃ 約1/4個、ブロッコリー 約1個

「ビフィズス菌入りヨーグルト+水溶性食物繊維」の超簡単レシピ

『焼き芋とグラノーラヨーグルト』 

買ってきた焼き芋とグラノーラ、ヨーグルトを合わせた超簡単レシピ。朝食にはもちろん、おやつにも。しっかり混ぜて食べるとよりおいしい。

【材料1人分】
ビフィズス菌入りヨーグルト(無糖)……100g
焼き芋(市販品)……1/2本(150g)
フルーツグラノーラ……30g

【作り方】
① グラスにヨーグルトを入れる。
② 皮をむいてひと口大に切った焼き芋とグラノーラを入れる。

『甘酒ヨーグルトのフルーツオートミール』

水溶性食物繊維が豊富なオートミールをたっぷり使った、寒い季節にもぴったりのレシピ。甘酒を使って腸活パワーをプラス。

【材料1人分】
ビフィズス菌入りヨーグルト(無糖)……100g
オートミール……40g
甘酒……100ml
バナナ……小1本(80g)
キウイフルーツ……1/2個(50g)
ブルーベリー……50g

【作り方】
① オートミールに甘酒を加えて軽く混ぜ、ラップをせずに電子レンジ(600W)で約2分加熱、取り出したら上下に混ぜて熱を逃がしながら混ぜ、そのまま5分ほどおいて粗熱を取る。
② バナナは1㎝幅の輪切り、キウイも食べやすい大きさに切る。
③ ①のオートミールに、ヨーグルト、(トッピング用のバナナを3~4枚残して)バナナを崩しながら混ぜて器に入れる。トッピング用バナナとブルーベリー、キウイを盛り合わせる。
※甘みをプラスしたい場合は、はちみつ(分量外)をお好みでかけても良い。
※温度に注意!ビフィズス菌は50℃以上になると死滅してしまうため、煮込むことやアツアツのものにプラスするのは避ける。温める場合は、電子レンジで温度設定するなどして、温度が上がりすぎないように注意が必要。

『ライ麦パントースト ドライフルーツヨーグルトのせ』

ヨーグルトで一晩戻したぷるぷるのドライフルーツがたっぷりのった朝食にぴったりのトースト。やさしい甘さがクセになるおいしさ。

【材料1人分】
ビフィズス菌入りヨーグルト(無糖)……100g
ドライプルーン……3粒(30g)
ドライマンゴー……20g 
ライ麦パン……1枚(60g)
はちみつ……小さじ2
ミント……適宜

【作り方】
① ヨーグルトにドライプルーンとドライマンゴーを入れて、そのまま一晩漬ける。
② ライ麦パンをトースターで焼き色がつく程度に焼き、はちみつを全体に塗り広げる。
③ ①をドライフルーツごとのせ、好みでミントを散らす。
※乾物をヨーグルトで戻そう!
ドライフルーツや切り干し大根などの乾物を、ヨーグルトにひと晩漬け込んで戻すと、栄養価も食感もアップする。乾物のまわりの水切りヨーグルトも濃厚でおいしい。

監修:管理栄養士 金丸絵里加さん

ビフィズス菌入りのヨーグルトに焼き芋やドライフルーツなどを混ぜるだけという手軽で簡単なレシピなら、さっそく今日から取り入れられそうだ。『短鎖脂肪酸』を増やす食事を意識して、“食欲の秋”も怖くない太りにくい腸を手に入れよう。

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